「ガラスを使った作品を作ってくれませんか?」そんな問い合わせを受けたのは、昨年の春のことだった。
「デザイン、アート、教育と色んなチャレンジをしている寧月さんだったら、ガラスを使った作品もできると思ったんです」、そう語ってくださったのは、とある大手不動産系列の広告会社の方で、マンション会員向けの雑誌の表紙に載せるアートを探しているのだという。そのときの私は、ガラスを使ったことなんかなかった。でも、「わかりました、作ります」と言いました。
それから、何日もかけて考えて作ったのが、この作品「遥」。ガラスという透明な素材の美しさを引き出し、書の美をさりげなくプラスしていく方法を考えて、水を使ったかつてないアートを発想しました。
でも、私一人では、この作品は作れなかった。だって、私はガラスのことは何も知らなくて、ただ頭の中に生まれただけの発想を抱えて、どうしようかさまよっていたところ、東京の下町にある猿江ガラスさんに出会いました。
工場を訪ねたのは暑い暑い夏の日のこと。火を使うガラス工場は、むんむんとして、タオルを頭と首に巻いた職人さんたちは、初めてやってきた小さな創作者の話を熱心に聞いてくださりました。
「むずかしいとおもうよ」、最初はそう言われました。
でも、その後も、何度でも話を聞いて、ガラスの上に書を書いていく方法を、小さなガラス玉を浮かせる方法を、このアートがこの世に生まれでる方法を、一緒に考えてくださりました。そして、「遥」は、こんな風に出来上がったのです。
残念ながら、この作品がマンション会員向けの雑誌の表紙を飾ることはできませんでしたが、「こんなものを作りたい」というお客さまの思いに寄り添い、発想を膨らませ、形にしていくという私らしいデザインのスタイルは、この作品に現れていると感じています。
その後、Facebookに載せるなり、海外ユーザーからも注目していただき、「ただただ美しい」などの感想を寄せて頂いています。試行錯誤の末に完成した、私の大好きな作品です。
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