子どもと共に成長できる喜び(書塾生レポート11)

35年ぶりに書塾に通うことになったきっかけは、当時小学3年生の息子の「習字上手くなりたい!」の一言でした。クラスのお友達の上手な書を見て思ったそうです。

で、探し始めて見つけた、池上本門寺近くの古民家カフェ2階でやっているアットホームな書塾。親子コースもある!こんな素敵な和の空間で、大人と子どもが並んで学べるなんて!と私も即入会を決めました。あの時のワクワク感を今でも覚えています。

課題は自由ですよ、とのことで、まずは人生初の隷書に取り組みました。曹全碑の臨書からはじめ、基本用筆の起筆や波磔など、初めて知る筆の運びからスタートしました。書道を大人になって再開してからいろんな発見もあり、自分の好みの字に出会う喜びもあり!中村不折や森鴎外の書など、真似したい作品にもたくさん出会いました。で、最初の作品展に出したのが、森鴎外「沙羅の木」です。

明美 臨書 森鴎外「沙羅の木」

細味ながら独自の風格がある鴎外の書にはまだまだ程遠いのですが、憧れの気持ちは褪せることなく、また4年経った今書いてみたいと思う作品であります。

次はまた中国の古典に戻り「石門頌」を。自然の岩肌に刻された、というのを意識しての筆運び。険しい山脈の中の、険しい道の…と当時の後漢時代に思いを馳せ、書きました。

明美 臨書 石門頌

石門頌は運筆が分かりずらく、お手本とにらめっこしながらの臨書でした。岩に刻すように紙にゆっくり筆で…素朴で自由な感じのする書風、味わい深くまたもっとたくさん書いてみたいです。また、隷書もいろいろ書風に特色があり勉強になります。(それぞれ歴史の背景も趣深いです!)

それからさらに時代をさかのぼり、篆書に取り組みました。そもそも自分の名前五文字の一番古い字は?との思いから、書体字典より調べ出して書いてみました。

明美 創作 五十嵐明美

水平、垂直に書く、同じ太さの線で書くなど、難しいところもあったのですが、何より漢字の誕生、発明シーンを想像したりと大昔の人の観察眼のすごさにうなりながらの、楽しい創作時間でした。 

隷書もかわいくて大好きなのですが、甲骨文、金文、小篆もかわいくて見ているだけでも夢中になります。

続いて、ガラッと趣向を変え、初めて小筆を持つことにしました。急に写経に取り組みたくなり、紺紙金字写経に挑戦。

明美 般若心経

般若心経は、真言宗のお寺に生まれ育った私としては慣れ親しんでいたものなのですが、実はじっくり向き合ったことも写経もしたこともありませんでした。一文字一文字ゆっくりと、一節一節意味をとらえながら書き進めました。その時間はなんだか懐かしく、亡き両親に抱かれているような感覚でした。まさに宇宙ですね。書に向き合うことで自分を見つめ、過去の人ともつながれるような感覚に…本当に素晴らしい経験でした。

小筆自体は全然まだまだなのですが、紺紙に金字は美しく、とても気に入っています。

その流れで空海の風信帖。忙しい息子に合わせて月1回の通いになり、上達も亀のごとくですが、大筆でどーんと書く楽しみを味わい、また空海から最澄への思いをあれこれ想像しながら(空海の漫画「阿・吽」ファンであります)力強くいくところ、丁寧に細く筆を運ぶところなど、先生にアドバイスいただきながら臨書を重ねました。堂々とした文字、美しい余白を意識し、半切の半分におさまる構成にしてみました。

明美 臨書 空海 風信帖

風信帖は書いていてすごく集中力が高まるというか、ゾーンに入る瞬間もある気がして書き進めたい気持ちもある一方、まだまだ課題も多く、空海作品を仕上げるにはひたすら鍛錬が必要だなと思います。空海自身のことをもっと深く知りたい思いも出てきて、今後も学びが広がりそうです。

過去の作品を振り返ってみて、様々な場面で先生にいただいたアドバイスやその作品のストーリーや時代背景について語ったこと、またその頃同じ時間を過ごしていた子どもたちのほほえましい様子も思い出し、胸がぽかぽかあたたかくなりました。

大人になってもまだたくさん学べること、子どもと並んで成長できる喜びを教えてくださった寧月先生、書塾花紅には本当に感謝しています。

まだまだ伸びしろはあると信じ、引き続き精進したいと思います!

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