書道の創作を行う中で、ある瞬間、
心が、もしくは身体が「解放」され、宙に浮いたような、
心地よい気分を味わうことがあります。
これは、ワークショップで参加者の多くが感じてくださることでもあります。
心身の「解放」とは、何か。
それは、簡単に言えば、「何も考えない状態」ということだと思っています。
「何も考えない」ことは、実はとても難しい。
「何も考えないように」と思えば思うほど、脳が働き、
グルグルと思考が巡ってしまう。
それは、人間誰しも共通の悩みだと思います。
それが、書道の創作(いわゆるお手本を見ての書道ではなく、自由に書くこと)
に取り組んでいると、同じ文字だけを何度も書き、
ただ自分の身体の呼吸と、柔らかな筆の弾力に集中するうちに、
自分が思考を持つ人間であることを忘れ、ただ自然と一体化し、
広い宇宙の中のただのひとつの物体であるような、そんな気がしてくるのです。
それは、とても、気持ちがいい。
私は、これが、「創作書道の効能」だと思っています。
なぜ、創作書道では、この不思議な感覚を味わうことができるのか。
他のアートと何が違うのか。
私なりの考えですが、書道は、他のアートに比べて、
かなり条件が制限されています。
特に、「白と黒」という色彩の限定、
「文字」を書くことによるイマジネーションの限定、は、
余分な試行錯誤を不要とし、
ただ目の前の紙に集中するという精神状態を生みやすいと思っています。
不自由な条件の中で、心と身体が自由になるのです。
この「心と身体が自由」な状態。
この状態で、人ははじめて自分自身の生命を固有のものとして感じ、
自分の生命から湧き出るエネルギーを発散することができると思っています。
クリエイティビティ。
自分の生命の力を感じてみませんか。