[ことこと書日記 vol.03]吉川英治「宮本武蔵」より


ことことと、日々を煮込むように。
1月28日新月、寧月のことこと書日記第3回をお届けします。

今回の題材は、吉川英治氏による長編小説「宮本武蔵」。

書道の道を歩み始めた人間として、常に頭の片隅に置かれている課題、
「道」とは何か?

それが知りたかったのか、偶然の巡り合わせか、
私は昨秋から、剣と禅の道を追求した人物、宮本武蔵に心ひかれて、
この小説を読み始めました。

吉川英治氏のこの小説は、今では井上雄彦氏の「バガボンド」の原作として、
より知られているのかもしれませんね。

さて、読み出したら、
当時NHK大河ドラマ「真田丸」も放映中で同じ時代設定だったこともあり、
面白くて面白くて。真田幸村、その息子大助も8巻に登場したりして。

そう、この小説には「道」とは何か?のヒントになる言葉が、
そこかしこに散らばっていて、読むほどに武蔵の生き方に共感を覚えてしまうのです。

そんな中から、
この一説を選んで書にしました。

寧月書「宮本武蔵」より
寧月書「宮本武蔵」より

小なる一個の人間というものが
どうすればその生命を託す自然と融合調和して
天地の宇宙大と共に呼吸して
安心と立命の境地を達し得るか
 (講談社吉川英治歴史時代文庫「宮本武蔵」第5巻226ページより抜粋)

これは武蔵が、「剣の道とは?」という自身の問いに対して、答えている場面での武蔵の言葉です。

武蔵は言います。
剣を、“人間的な内容”に突き詰めていかなければならない、と。
人間として、自然と融合し、調和したときに達し得る境地が、「道」である、と。

剣道でも、書道でも、華道、茶道でも、「道」を志したことのある人であれば、
この「天地の宇宙大とともに呼吸」する感覚、そのときに自分を包む幸福感、
同時に生じる敬虔な心持ちを、身体に記憶しているものではないでしょうか。

吉川英治氏は、武蔵の身体を借りて、「道」とは何か?という、
日本人が抱え続ける根本的な問いに、見事に答えてくれていました。

「道」の道の先に到達すべき境地は、「安心と立命」です。

そのことを胸に、今日もまた、書の道を歩いていきたいと思います。

 

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